Tokyo Decadanceなどのクラブパーティでポートレートを撮影しだしてからもう6年以上の月日が経過している。かれこれ600人以上の奇妙なファッションの人たちを撮影してきて、いまも撮影がつづいている。
90年代に本格的に日本に入ってきたボンデージやSM、ラバーといったフェティッシュファッションからゴシック、ゴスロリ、甘ロリ、メイド、ヤマンバ、サイバーパンク、エンジェラーなどなど、世界のはずれの地である東京のクラブピープルたちのファッションは西洋と東洋、過去と未来が渾然一体となった不思議なごちゃまぜ感覚にみちている。
きっと彼らは現代版のバサラや傾奇者なのだろう。こうした異風を好み派手な身なりをして常軌を逸した行動に走る者たちは乱世や一つの文明の終わりに世に姿を現す。
現代のバサラたちは決して暴力的ではない。お互いのファッションを「すてきね」とほめあっている。「和(やわらか)なるを以って貴しとし、さからふること無きを宗とせよ」が聖徳太子以来、日本人の精神の奥底にある。お互いの世界観を批判するのではなく、違いをわきまえ、ディテイルを深く練り上げていくことで精神性をより深めようとする。
彼らのつけまつげやエクステンションといわれる髪飾り、身体の様々な部位につけているキャラクターグッズやタトゥーは際限なく色鮮やかに増殖しているようだ。
神々や精霊がもうそこに住む人間たちに何も語りかけなくなってしまった巨大都市東京で、あたかも彼らは古代の呪術師のような役割をはたしているのだろうか。
精霊は派手な色彩や飾りに魅きつけられやすいとされている。古代から人間が精霊たちに幸福をもたらしてくれるように頼みこむときはこのような派手な色彩と装飾が役に立つとされてきたのだ。
石油文明が急速に終わろうとしている東京で現代のバサラたちは精霊たちの恩寵をよびよせることができるだろうか。
このピンナップもまた果てしなく続く降霊のためのパーティであるかのようだ。